《2・儚き少女》
どうして私達はこうなってしまったのでしょうか。
昨日まで、皆さんと一緒に同じグラウンドで、私達マネージャーはそれをサポートしながら、
甲子園に向けて精一杯野球を頑張ってました。
監督は、部員一人一人に助言して、彼も汗をかきながら共に古豪復活を夢見ていました。
でも、昨日の監督はどこか様子がおかしかったんです。
遠くからグラウンドを見つめては溜息をついて、目は赤く腫れていました。
それは、今思うと監督はあのグラウンドに別れを告げていたように感じます。
私は、心の中では監督は私達に殺し合いなんかさせたくないと思ってるって、信じたいんです。
これはおせっかいでしょうか?大きなお世話でしょうか??
でも、こうする事で自分に納得させるしか、ないんです。我慢しなければいけないのです。
「…それでね。今回、前回の優勝者の首輪は作動しないようになっているの。
それは、ちょっと約束を破っちゃったから、サービスなのよ」
「その約束とは一体…?」
辰羅川が二度目の質問をした。すると神崎は、ふふっと少し笑った。
「今回の参加者は積極的な子が多いのね。まぁ全部教えてあげるけど。
…約束っていうのは、前回優勝した時にその子から聞いた望みだったのよ。
『自分を二度とプログラムに関わらせないで』ってね。
でも今回関わっちゃったでしょ?だから約束破ったサービスって事よ。」
「…それは大変…優勝者も、喜ばしい事で…しょうね」
牛尾は俯きながらそう呟いた。他の者も、落胆している。
「…これでルール説明は終わりよ。今から一人ずつここから出て行ってもらうわね」
そして神崎の隣にいたもう一人の男…樋口が高らかに言った。
「まずは…犬飼!前に出ろ!!」
「…はい」
あぁ、犬飼さんが呼ばれました。
彼は多分、5名の中に生き残れると思います。
犬飼さんはあの眼の奥にとてつもない殺気を隠している。
もしこのプログラムに華武高校の野球部も参加していたらと思うと、ぞっとします。
「黒豹!そして牛尾に…子津!!」
黒豹さんは、子津さんと関わりが深いのでこのプログラムに参加させられたそうです。
こんな言い方はひどいとは思いますが、黒豹さんも気の毒です。
…猿野さんは。
猿野さんも、人を殺してしまうのでしょうか。
少しずつ、人を殺すことに快楽を覚えていってしまうのでしょうか。
そんなの、嫌です。猿野さんが血に染まるところなんか見たくない。
でも、いずれは現実になってしまうから。だから、その前に。
「さて残りは…鳥居、辰羅川、獅子川、津島、猿野だな」
そんなことを考えていたらもう私の番がまわってきました。
「じゃあ…鳥居、起立」
「はい」
バッグを受け取り、教室から出る前に一度振り返る。
もう二度と逢えないかもしれないから。
だから、猿野さんの姿をこの目に焼き付けておきたかった。
猿野さんが、いつもとは覇気がない…悲しい目で私を見ていた。
「早く教室から出て行け」
ピシャリ、と私は他の人が残っている教室から出された。
きっと、もう逢えない。
だって私は。
―――――――――――――だから。
私もいつか、紅い火に染まることでしょう。
楽しかった、あの日々に…さようなら。
《残り 29名》
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