やだ、とうさま、いかないで。
何でボクをおいていくの?
まって、とうさま。今度からはおるすばんちゃんとするから、
だからボクをおいていかないで。
ボクはとうさまといつも一緒にいたいんだよ。だからボクを放さないで。
ご飯も残しません、お洗濯もちゃんとしますから。
私には、貴方しか家族がいないんです。
だから・・・一人で死なないで。私を置いていかないで。
サクラ 第二話 闇
「・・・げん、・・・く言、・・・伯言、起きろ」
「・・・・・・こおは・・・どの・・・?」
軽い睡眠、と思っていたのにいつの間にか私は熟睡してしまい、空は暗くなっていた。
「伯言、疲れてるんじゃねえのか?あまり無理するなよ」
「いえ・・・大丈夫ですよ。心配して下さって有難う御座います。」
私は必死に笑顔を作った。悟られてはいけない。
私が今まで見ていた夢で泣いていた、なんて事が知れたら
興覇殿は絶対私を心配する。
「そうか?なら良いけどよ・・・。もう皆待ってるぜ?早く起きろよ。」
「分かりました。興覇殿も先に出てても結構ですよ」
ああ、と言って甘寧は部屋を出た。
「ふう・・・危なかった・・・この汗が知れたらどんな事になっただろう。」
嫌な夢を見た。しかもとても懐かしい。
どうして今になって父様の夢が出てくるのだろう。
折角皆で夜桜を見物(ほとんどは飲むだろうが)しに行く時だというのに・・・。
一番思い出したくない夢見てしまった。
孫家が攻めてきて父様が死んだ時の夢。私はその目の前にいた。
でも私は父様がどんな方だったとか覚えていないし、
父様が孫家とどんな関係だったとかも知らされていない。
実際私は父様に嫌われてた。
だから今となってはどうでもいいことなのだけれど。
「おーい、陸遜!遅いぞ!!」
私が呉城から出ると、もう皆が私を待っていた。
「あ・・・申し訳御座いません!!」
私の謝罪にも孫策は笑顔で大丈夫、と許してくれた。
「よっしゃあぁ!それじゃあ皆行くぜ!!目標は呉で一番でっかくて綺麗な桜の木だ!!」
そして、皆馬に乗って進みだした。
流石に全武将を率いるのはいざという時に困るため、孫堅と6割の武将が城に残った。
「おい・・・陸遜。顔青ざめてるぞ・・・大丈夫か?」
「え・・・?」
興覇殿に言われてやっと気付いた。
一昨日から何も食べてない。
溜まっていた仕事があったので
食事をとれなかったのだ。
「大丈夫ですよ。心配結構です。」
ズキン
・・・?
「陸遜、あまり無理しちゃ蜀の諸葛亮みたいにハゲ疑惑がでるわよ?」
「・・・大丈夫、です。気をつけます。」
ズキン
何?何か頭が痛い。桜の木に近づけば近づくほど痛みは増してくる。
まるで私の身体がその桜の木を拒否してるみたいに。
ズキン、ズキン、ズキン
何故私の身体はあの桜の木を拒んでいるの?
これはさっき私が見た夢と関係があるの?
桜の木と父様に何の関係があるというのか・・・?
「さあー着いたぜ!!皆、今日は存分に飲もうぜーー!!」
実際夜桜を見ているものは極少数しかおらず、ほぼ皆酒浸りであった。
その中で私はただ一人、暗闇の中舞う桜の花びらを見つめていた。
さっきの頭痛は治まらず、今も頭の中で鳴り響いている。
何故私には父様が死んだ頃の記憶がないのでしょうか・・・。
何故私はこんなに美しい夜桜を拒んでいるのだろうか。
何故私は嫌いだった父様の事にこんなに執着しているのでしょう。
『・・・・・・・い』
でも父様はどうやって死んだのでしょう・・・?
『・・・・・・こない』
・・・?
『・・・そこない』
な・・・誰の声・・・!?頭に・・・
『出来損ないが』
頭に・・・意識が・・・入って・・・・
『・・・所詮お前は出来損ないでしかない。諦めて私に身体の所有権を譲れ』
誰・・・・・・・・!?
・・・・オヤスミ。
「伯言ー??お前も酒飲めよ〜!伯言?」
「おい!伯言!!しっかりしろっ!!伯言!!!」
3月28日午後未明、倒れている陸遜を甘寧将軍が発見。
ねえ、とうさまは知ってた?
ボクはとうさまといつも一緒にいたいんだよ。だからボクを放さないで。
ご飯も残しません、お洗濯もちゃんとしますから。
私には、貴方しか家族がいないんです。
だから・・・一人で死なないで。私を置いていかないで。
でないとまた、自分を失うから。
サクラ 第二話 「闇」 了。
NEXT
来ちゃいました。第2話です。
つうかもうテーマが完璧シリアスになってしまいました。申し訳御座いません。
ここまできて改めて自分はシリアスがスキって事を実感いたしました。
諸葛亮〜で何とか戻そうと思ったんですけど、駄目でした。
そろそろ物語の本題に入っていきそうです。
ぶっちゃけこの話どうなっていくかまだ最終的には決めてませんから☆(オイ)
2004/5/5 山本ハルカ