欲しいものはいつも人のもの。
人のものには手は出しちゃいけません。

でも、手が出せないからこそ、俺はいつも求めてしまう。







手が出せないからこそ







俺は凌統っていって、今呉に仕えてる。
父を水賊の甘寧に殺されて、とても憎らしく思ったが、
合肥での戦により和解し、平和になるのかと思っていた。
でも、和解どころか俺は甘寧を好きになってしまった。
憎んでいた時こそ気付かなかったが、実際甘寧は優しい。
でも俺は、甘寧に思いを告げる事ができない。できるわけがない。

甘寧には、陸都督という、恋人がいるんだ。

あの二人は俺と甘寧が和解する前からそんな仲だったらしい。
そんなんじゃ、俺最初っから脈ないじゃん?
それでも甘寧が好きな俺って、何て一途なんだろう。


「はぁ〜」
「はぁ〜じゃなくて、ちゃんと聞いてんのかコラ」
ちゃんと聞いてろ、といきなり甘寧は俺の頭を軽く叩いた。
今、俺と、甘寧と、陸都督の3人で芝生の上で『プチ軍議』中、だ。
「ですから、甘寧殿は川の上部より魏軍を攻めて下さい。」
「おう。じゃあお前んとこの朱然とで挟撃すればいいんだな。」
「はい、それで拠点さえ潰してくれればあとは火刑を行うんで…」
俺はつまんねぇ、を訴えた目で二人を見ていた。

「(見た目とかは結構お似合いなんだよなぁ…)」

「また火刑かよ!!お前好きだな〜」
「好き嫌い云々よりも、火刑は効率がいいんです。」

「(性格も頑固な所が似てるよなぁ…)」

「ま、俺がその前に魏軍を真っぷたつにしてやるけどー。凌統、お前聞いてんのか?」
「んー聞いてるって。俺は甘寧のサポートしときゃいいんでしょ?」
そうです、と言って陸遜は服をはたきながら立ち上がった。
「では今から呂蒙殿の所へ行って参りますね」
「あ、子明んとこ?じゃあ俺も!!!!」
「あっ…おい」
もうちょっと話そうぜ、と甘寧を呼び止めそうになった。
俺が呼び止めてしまったら、陸都督も不快だし、甘寧も不快だ。
まぁ、俺はそんな邪魔するつもりはねぇけど。
「つもり…な」
「はぁ?何言ってんだお前。ほら、お前は行かねぇの?」
「んーいいよ。二人で行ってこい。」
そうか、じゃあな、と甘寧と陸遜は二人で去っていった。
「どんだけ俺はお人よしなんだよ…。てか、この手が嫌だな…」




俺が好きな甘寧には既に恋人がいて。
好きでいても報われない恋で。

俺は甘寧の優しさに惹かれて。
でも、その優しさは俺の為じゃなく、陸都督の為で。

俺は、甘寧の温もりが欲しくて。
でも、その優しさは、一生得られない。





俺は、甘寧に伸ばしかけた腕をきゅっと戻した。




手が出せないからこそ俺は、求めてしまう。

気持ちに応えてほしい、と、願ってしまう。














END



















久しぶりに短編書きました。短いです。
最初の文が何か…というか、もろに凌統伝にかぶっているな、と。
いや〜私本当にラブラブが書けない!!!!
いつも悲恋とかになってしまう…(汗)
今度はちゃんとしたラブラブが書けたらい・い・な!!!




2005/3/25  山本