古代中国のとある場所に、三國駅という駅がありました。
そこは、自分の人生の行き先を求める者がここへ来て、駅長・陸遜に道標を教えてもらうのです。
今日も迷える狼が一人。
三國駅〜美女とゴ○編〜
本日は雨上がり。久々に見る太陽が清々しい。
陸遜は洗濯物である赤いツバメのような服を干していた。
「あの…ごめんください」
「はい、どうぞ。どうなされました?」
本日駅に訪れたのは誰もが釘付けになるような美女であった。
陸遜も、惚れるとか云々の問題ではなく、単純に美しいと思った。
淡い桃色の衣を身にまとった姿は、薔薇を想像させる。
「あの…私、今ある方から逃げている身でして…」
「?何かやらかしたのですか??」
女性は俯いたまま言葉を発さなかった。
「ここでは何もかも打ち明けないと『幸せ』へは行けませんよ。貴方…お名前は?」
私がそう言うと女性は顔を上げ、苦し紛れの笑顔を見せた。
「そうですよね…申し訳ありません。私の名は貂蝉と申します。」
可愛らしい名前ですね、と言うと貂蝉は少し嬉しそうに笑った。
「それで―…一体どうしたのですか?」
「…私は、義父さまの命を受けて、国を牛耳とろうとしているクソブタの所へ向かいました。」
「(あぁ、あの董卓ですね。)あの方の悪政なら私の耳にも入っております。」
「そしてそのクソブタの義理の息子を利用し、クソブタを苦しめる事に成功しました。」
貂蝉は一度、溜息をついた。
「義理の息子がクソブタを殺して私は姿を消す――…これが最高のシナリオだったんです。でも…」
「でも?」
「彼はそのまま泣きながら私を追いかけて来るんです…」
「(…どうして最近はやっかいなものばかりなのでしょう……)」
貂蝉は私の手を握って頭を下げた。
「教えて下さい!どうしたら私は幸せになれるのですか!?」
私は、大丈夫ですから、と彼女を落ち着かせた。
「どうしましょう…今ここにいるだけでも危険なのに…」
貂蝉はガタガタと震え出す。私は貂蝉の肩を支え、言った。
「大丈夫ですよ!!そんな輩は私が倒してみせましょう。」
「…駅長さんはご存知ないのですか?呂布を。」
「え?」
「義理の息子っていうのはあの敵なしといわれたあの呂布ですよ?」
・・・タラーン。(汗)
陸遜の顔が一気に青ざめ、貂蝉と同様、ガタガタと震え出す。
「貴方何でそんな厄介なのに手ェ出すんですか!!!!」
「仕方なかったんですもの!!クソブタを殺すにはそれしかなかったんです!!!!」
あぁ…と陸遜はうなだれる。
もしかしたら今日、駅に到着するのはあの世行きの電車かもしれません…。
「どうしましょう…こればかりはどうに…」
急に駅周辺の空気が変わった。
ザワッと葉と葉の重なる音が強まる。
そして並ではないプレッシャーが自分に襲い掛かった。
「…来ましたっ…。」
ザッ…ザッ…と足音がする。
遂にその男は来てしまった。
「貂蝉…」
その男を見るなり、私の中にある一つの生命体が頭をよぎった。
人間とは一生相容れぬ存在、家庭内では悪魔と称される黒い物体を。
「つうかゴ○ッ…」
「何だ!?(怒)」
私は今、死を覚悟した。
…戦場でゴキ呂布に消されるなら本望…
「奉先様!!お止め下さい!!!!その方は何も悪くありません!!」
「貂蝉…お前は何故俺の元から去った!?」
呂布は汗だくになっていた。きっと必死で追いかけて来たのだろう。
あぁ、この人はたまらなく貂蝉が好きなんだろうな。
陸遜は、そんな事を思っていた。
「奉先様…私には貴方と共に生きる資格などないのです!!
貴方には…私の事など忘れて乱世を生きて欲しい…」
「そんなわけがいくか!!貂蝉…そんな事に資格などいらぬ!!
俺は、お前と共に生きて行きたいんだ…!!」
何故貂蝉は愛している呂布と生きる事を拒むのだろう。
「…貴方は、何故呂布殿を愛しているのに一緒に生きようとしないのですか?」
私はつい口走ってしまった。完全に私は邪魔だった世界に入り込んでしまった。
ミスを、犯した。
でも貂蝉は私の質問に答えてくれた。
「…生きようとしないのではなく、生きる事が、できないんです。」
「貂蝉、それは…?」
彼女はニコリと笑う。
「そう、私は奉先様を愛しています。でも私は醜いです。
自分の野望の為に利用してしまった――…そんな最低な女なのです。」
「そんな事…俺は最初から知っていた。」
貂蝉は、驚きの表情を隠せなかった。
「俺はそんな事気にしない!!だから…来い、貂蝉。俺の元へ…」
貂蝉は涙を浮かべながら首を横に振った。
「でも…私は将来貴方と永遠に別れる事が怖いのです。
どんな者でも『死』だけは避けられないから…」
「貂蝉!!―――!――――!!」
「―――!――!!!!」
「――!!―――!!!」
「―!――!!」
「(あぁ、正直言って暇。)」
ここ私の駅ですよ!?私から切符もらって幸せに行くんですよ!?
何なんですかこの孤独感。
「貂蝉、なら俺が先に死んだら俺はお前が死す時、迎えに来る!!
だからお前も俺が死す時に迎えに来るのだ!!!!」
「奉先様っ…」
「(いいのかよ、こんな解決法で…)」
「わかりました…。これから私たちは死んでも一緒ですよ。」
「あぁ…ずっと一緒だ…」
「(…終わった?)」
私はポケットから切符を2枚出した。
それを貂蝉に手渡した時、彼女は満開の花のような笑顔だった。
「今回は特別に2人分です。2人共、幸せでいて下さいね。」
いつものタイミングで電車が到着した。
どうしたらこんなタイミングよく電車が来るのか気になるが。
「駅長様、ありがとうございました。」
「いえいえ、私は何もしてません。貴方が頑張った結果ですよ。」
「貴方も…どうか恋をなさって下さい。」
「え?」
貂蝉はクスリと笑い、私の右手をぎゅっと握った。
「恋をすることで…貴方の幸せにも一歩近づけると思うんです。」
「え…?私の幸せって…」
「貂蝉、そろそろ行くぞ。」
「はいっ。では…」
呂布と貂蝉は仲良く手を繋いで電車に乗り込んだ。
窓越しに見える2人は、とても幸せそうに笑いあっていた。
『貂蝉、住まいは何処がいい?』
『私は貴方がいるなら何処でもいいですわv』
『ったく、この可愛いやつめ!』
『ウフフv愛してますわ、奉先様。』
『俺もだ…貂蝉』
「(誰かこのバカップルをどうにかしやがれ。)」
ここは三國駅。
幸せが見つからない時はここへ来ましょう。
きっとここには、貴方の探している幸せがある。
今日も幸せという名の電車は平常運転中。
END
遂にゴ○登場。
最近どうもスランプというか、自分の思い通りの文が書けません。
思い通りに書けても駄作には変わりありませんが。
何を書いてもかぶる、というか…新しいものができないというか…。
■□次のヒントは「JUSTICE」だよ☆(ウゼェ)□■
2005/3/28 山本