私の中の何かが、彼に会いたくないと拒絶する。
でも会わないと、何も進まないでしょう?
『私』は、彼に会って、全てを知りたいんです。

ねぇ、お願い。もう誰も邪魔しないで。










ラ  第五話「痛み」










もう、あの人には会わないで。

彼に会えば、『自分』が壊れる。

あの人は、もう貴方の恋人でも何もない。最低な人。





―――・・・黙れ。

勝手に決めるな。何をするかは私が決める。






正直、『信じて』と言われてはいと答えれる程、純粋にはなれない。
今ここに起こっている現状が分からない、分かりたくもない。

今まで愛していた人が、私の恨むべき人だったなんて。
何であの人は教えてくれなかったんだろう。


私は、『貴方』を愛していたんです。"人殺し"なんか気にしていない。

嘘。本当は何も信じれなくて答えを求めようとしているだけ。


私は、『貴方』を愛し続けたい。いつまでも、一緒にいたい。

嘘。ただそうやって現実逃避したいだけ。
父を甘寧が殺した、という事実を消そうとしている。





いろいろ考えては、私の本心が『嘘』と、せき止める。












もうあの人は愛すべき人じゃない。自分だって分かっているんでしょう?

あの人はもはや殺すべき人。あの人は、私の仇。

甘寧を信じたら、駄目。信じたら全てが終わる。



あの人は最低なんだよ?






・・・・・・どうして?




甘寧は『私』の父を殺して、それでも笑顔で『私』に近づいてきたんだよ?


・・・・・・それは・・・でも・・・。


でも、じゃないよ。聞いて。
甘寧は、たった一人の『私』の親を殺した。
憎み、悲しみが生まれてくるでしょう?別におかしいことじゃない。
甘寧は『恋人』じゃなくて、『親の仇』なんだよ?



・・・・・・私は『甘寧殿』を愛しているんです。
    それに、父様ならそんな『仇討ち』なんて望むわけありません!!


・・・随分分かったふうな口が利けるんだね。
でもね、『父様』はお前の思っていたような人じゃない。
本当のあの人は欲にまみれ、人に何しても笑っていれる。
・・・腐った人なんだよ。



・・・・・・でも!!私といる父様は違う!!!!何よりも私を大切にしてくれて、
    ・・・優しかった!!私にとってはそれが『本当の父様』だ!!


・・・そうなんだ。勝手にそう思っておけばいいよ。
でも後で後悔したって知らないからね。
頑張ってきっちり甘寧に騙されておいで。




・・・・・・大丈夫。私は甘寧殿を愛しているから―――・・・。
    心配しなくても、いいよ。もう一人の私。















私の本心は、醜かった。
自分が傷つくのを恐れて、人を信じようとしない。
でも、だから『私』を止めようとしてくれた。   不器用な優しさ。



実際、どうなのか分からない。
もしかしたら本当に甘寧は殺すべき存在なのかもしれない。

でも、もしかしたら愛していいのかもしれない。


全ては、一度甘寧と会って話すべきなのは分かっている。
でも、今はあの人に会いたくない。
多分、今会ってしまえば私は剣を取り、あの人に斬りかかってしまうだろう。

そうしてしまったら、もう一人の私が見ていた最悪の結末を迎えることになるだろう。
だから、今は甘寧から離れていよう・・・・・・。










そう思ったのも束の間。


コンコンと私の部屋のドアがなった。
「・・・伯言、話がある。・・・開けるぞ。」
「か、甘寧殿っ・・・!!」

ガチャ、とドアが開く。


今は甘寧と話したくない。だから―――・・・


「おっ、オイ!!ちょっと待て!!」

私は逃げるように窓から外に飛び出た。


ただ、甘寧を愛したいからと思う、一心に。

























私の中の何かが、彼に会いたくないと拒絶する。
でも会わないと、何も進まないでしょう?
『私』は、彼に会って、全てを知りたいんです。

でも、もう少し待って。
そうしてくれたら、私は何もかも受け止めるから。
お願いだから。私の願いをきいて。





















ラ  第五話 了。
























会話が全然ありません。あるとしたら最後のぐらい。
昔のサクラと今のサクラじゃ物語の見方が変わってきているんで、
こんなめちゃくちゃになってきているのも無理はありませんって。(コラ)

やっとクライマックスに近づいてきました。
あと少しです!!もうちょっと着いてきてください!!(必死)


2005/05/12  時雨